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ワンカットでなくても十分面白い映画
この映画、”ワンカット”がやたら強調されて、逆に面白さが伝わってないような気がする。
一言で言えば、”別にワンカットでなくても十分面白い”という事だ。
自分自身は、”まるでロールプレイングゲームのようだ”という感覚だったな。
主人公に”進むべき道”があって、次々と難関が現れるが、それを突破、すると次に新たなる脅威が待っている。
そういう経験を積んで、主人公が成長するわけだ。
迷路のような塹壕の中を長いカットで表現する
ワンカットというか、長いカットが生きているのは迷路のような塹壕の中を主人公が歩いているところだ。
細長い塹壕の中を主人公と共に”カメラも”歩いていく。
この風景が前線に近づくにつれ徐々に悲惨な映像に変っていくところが対比されていて面白い。
この”徐々に変わっていく映像”がロングカット最大の見せ場だ。
戦争の悲惨さを伝える
主人公の使命が”攻撃中止命令を伝える”という伝令なので、戦闘シーンはほとんどない。
しかし、主人公が通る道には、多数の遺体がころがっていて、これを踏み越えなければ使命を成し遂げられないという試練が訪れる。
最後には、ほとんど「キリングフィールド」か?というような目を覆うようなシーンもある。
オープニングとエンディングの美しさが別格
本作は、ヨーロッパの美しい風景で始まり終わる。
そのような美しい風景からカメラをパンして振り返ると悲惨な光景が広がるというギャップが面白い。
戦争がいかに悲惨なものか、戦場がいかにして誕生するのか?といった部分も良く表現されている作品だと思う。
ワンカット映画として
長い塹壕の中をワンカットで撮るというのは、確かに効果がある。
しかし他はどうか?
そもそも、”ワンカット”と大々的に宣伝している割には、実際にはカットが入っているのも気になる。(でなければ時間軸が合わない)
わざわざ書くのもナンだけど、”ここ編集じゃない?”という不自然なシーンもあった。
こういった部分を残すよりはむしろ、オープニングとエンディングの塹壕のシーンをロングカットとして推した方が良かったのではないだろうか?
客の中には”ワンカット”ってどんな映画だろう?って期待した人もいるかもしれない。
ここはちょっとがっかりかな。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』と比較
「ワンカット」と聞いて、すぐに思い出したのは『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』だ。
本作は、”ほぼ”ワンカットの映画なんだけど、前宣伝ではそこは強調されなかった。
なので、何も知らずに見た僕なんかは、”どうやって撮ったんだろう?”と逆に興味津々だった。
そういう意味では、敢えてワンカットを強調しなかったからこその”驚き”を観客に伝えることができる。
『1917 命をかけた伝令』は、”ワンカット”を強調され過ぎたために、全体としての印象が薄くなってしまった感がある。
うがった言い方をすれば、”どこかに編集があるんじゃないか?”と、間違いさがしのような事を観客にさせてしまう。
そして、実際にそのようなシーンがあるんだよね。
ここが、がっかりなところだ。
できるなら、”ワンカット”にこだわらずに見ていただきたいなぁ。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
本作は、オープニングにカットがあるため、「ワンカット」の告知はほとんどされなかった。
だから、実際に見た人は度胆を抜かれたのではないだろうか?(実際に度肝を抜かれた)
実際にはSFXも多数使われている事から編集はしてあるのだろう。
だから、大事なのは、ワンカットで撮ることではなく、ロングカットにした方が効果があるシーンかどうか?なんだよね。
撮るという過程よりも、完成度の方を優先させる事が大事なんじゃないだろうか?
ワンカット(ロングカット)に興味のある方は、こちらもぜひ見て欲しい。